しがさかのブログ

関越・羽越ウォーク(神奈川県〜秋田県)の記録など

カムイ・カイコウ(四)

車を止めても後ろからは誰も来ない。高速道路を走っているという感覚がすっかり薄れてしまったので三角表示板も置かずに現在地を調べ始めた。

 

カーナビはどこかのトンネルの入口付近で固まっている。もう最後のトンネルを出てから40分くらい経っているはずだが、測位がうまくいかなかったのだろうか。

 

カーナビは諦めて道路地図を取り出す。高速道路に乗った旭川鷹栖ICから道を追ってみる。山を抜けると音江PA、深川IC。これらはもう通過していてもよさそうだが、標識も分岐も無かった。さらに先を見る。深川JCT深川留萌自動車道が分岐している。その名の通り留萌に向かっているが、留萌幌糠ICから先は未開通のようだ。ここで一般道に下ろされてしまったか?

 

地図だけでなく外の様子も見る。相変わらずの下り坂でこの先は緩い左カーブになっているようだ。車線は2つ。右側は追越車線だと思っていたが、本当は対向車線なのかもしれない。建物は見当たらないが、道路の左側は谷で右側は山になっているようだ。

 

車から降りて再び周りの様子を見る。後ろもあまり遠くは見えないが建物はなさそうだ。道路の左側の谷に何かないか…… あった。建物の明かりらしきものが見える。あそこへ行けば現在地が分かるかもしれない。

 

スノーブーツに履き替えて懐中電灯を持ち、明かりの方へ下りていく。幸い整備された遊歩道のような道があるのでそこを通る。すると駅に辿り着いた。駅名は分からないが列車も止まっている。蒸気機関車に客車が繋がっているので観光用の列車だろうか? 機関車が起動しているのに乗務員も駅員も乗客もいないのは違和感があるが。

 

客車の中を見ると人が1人だけいる。身軽な格好の青年だ。観光に来たのだろうか。そんなことを思っていると青年が俺に向けて手を振ってきた。どこかで会ったことがあったかな? 会話を交わすのも悪くはないと思い、客車に乗り込んだ。駅名も分かっていないのにこのまま車に戻っても進展がない。

 

どうでもいいことだが、客車に乗っている人が駅のホームにいる俺に向けて手を振るというのは既視感があった。