カムイ・カイコウ(7)
忘れ物を回収するために客車に入ったすぐ後のことだった。僕は突然激しい目眩に襲われた。重力が狂い体のバランスを失う。回転を伴いながらどこまでも落ちていく。誰かに引き上げられるような感覚…… ん、今度は違うぞ。
気がつくと薄暗い建物の中にいた。さっき通った駅舎の中で寝ていたようだ。隣に彼もいる。
「大丈夫か? 気分、悪いんか?」
「さっきよりは良くなった」
「無理しないで、ここで少しゆっくりしていくか」
それから少し寝ただけのような気がするが、体はすっきりしている。彼に話しかける。
「今何時ですか?」
「19時54分。気分はどう?」
「もう大丈夫です。ありがとうございます」
「もう大丈夫なのか? 車まで移動できそう?」
「はい、またお願いします」
彼の車が止まっている道路までの登り坂も難なく歩くことができた。再び助手席に乗り込む。車はUターンしてさっきと同じ坂を下り始めた。
積雪が減り、駅に向けてUターンした地点はもう越えただろうと思ったそのとき、前方に青い標識があることに気がついた。ここは道道3号らしい。